2011年8月8日月曜日

LUX SQ38FD の蘇生・修復 トランス編

LUX製品 LUXMAN SQ38FD など真空管システムを こよなく愛し古典芸能を楽しんでいます。 無銭庵 仙人 と申します。記載内容については 営利を目的としない 趣味・道楽範囲での記述内容となっています。過去からの記憶・経験などを忘備録として記載しています。誤記載・誤解釈が多々あると思います。ご了承願います。多少手助けになればと思い 自己責任での記述・作業内容です。オーディオ雑誌などの筆者とは異なり 参考程度とご理解ください。    m(__ __)m

LUXMAN MQ60,MQ60C LUXKIT KMQ60,A3500  にも OY15-5 が搭載されおり 多少電圧増幅管種に違いがありますが 回路構成および調整数値については似通っています。修理・修復作業の 参考となればと思い記述します。

ブログサーバー掲載容量などにより SQ38FD改修・蘇生編、出力トランス考察資料編に分割して掲載しています。細部までトランスを分解しての調査結果報告は見受けられません。今まで悩んでいた故障原因の疑問が解決できました。又OY15-5もどき出力トランスの工作内容についても記載しました。もどきとは外観はオリジナルであるが内部は別物ということです。

改修前の内部構造です 修理個所はありません 初期状態です

商品としては 約40年前に製造された量産品管球式ステレオプリメインアンプです。機能・特徴の説明については他の方々、諸先輩方にお願いすることにします。ST管のラジオ少年時代から半世紀 真空管と長年お付き合いしてきました。
社会人となってからは一時 マルチチャンネル・4チャンネル半導体アンプなどを使用してきましたがすぐに飽き 温まりのある真空管アンプに戻り 長々と道楽が続いています。現在では骨董品機器の音源としては ほとんどデジタル音源再生ですが 不自由なく実働しています。現代の半導体アンプよりは心地よいデジタルくさくない音色で動作します。

当初の工作は物まねから始まり現在は測定機器などを使い設計領域まで探求し過去に開発された回路及び使用部材を検証しています。古典芸能である真空管式オーディオでは現代でも稼働させるにはある程度加工し部品を作成しなければ修復できない場合も多々発生します。又オリジナルに近い代替えも視野に入れなければなりません。当時販売された量産品は自作機器よりはやはり見栄えもよく現代においても当時とよく似たデザインの機器が高額となりますが LAXMANより新製品が販売されています。OYシリーズの出力トランスも再生産され搭載されています。トランスの内部構造は当時とは違っていると思います。通電表示のパイロットランプも金環日食のような表示も復活しました。真空管は国内では以前より製造されておらず 輸入管を選別して使用しているようです。真空管は古いデバイスですが 現代においても通用する真空管システムは半導体にはない音色を演出してくれます。道楽・趣味の領域であり 各個人の思い込みがほとんどと思います。真空管は半導体に比べて特性は悪いのが当たり前ですが・・・・・・・・ 
修復目的として 現代の高額な真空管機器を道楽で数多く購入できるだけの財力はありません。過去の優秀な機器を現在手に入るものを使って時間をかけポケットマネーで蘇生させることです。


LUXの管球アンプは特性が良いが故障する箇所が同一であり 修復費用も馬鹿になりません。
KMQ60,MQ60,SQ38FD共 出力トランス不良に遭遇しています。使用されているトランスの型番は OY15-5  OYシリーズで数多く量産され (たぶん大阪市内及び近郊の町工場で製造 ?) 特性としては他社では真似のできない分割、サンドイッチ巻の良質の出力トランスです。

自宅では当時常用システムの KMQ60 出力トランスの不良で悩まされてきました。その時代には子育ての真っ最中であり 原因追求する暇もなかったのですが 今回余暇がてきましたので原因追求をすることができました。上図は改修前のアンプ内部です。

出力トランス OY15-5 良否判断方法 については LUX SQ38FD の修復・蘇生編 に個人的な見解ですが良否判断を記載しています。なお出力トランスの簡単な動作理論・試験方法などは出力トランス考察資料編 に記載しました。
修復・蘇生編  luxsq38fd.blogspot.com    出力トランス考察資料編  luxsq38fd02.blogspot.com

OY15-5 出力トランスの分解



分解工程での写真及び分解手順

底板にある取り付けネジ穴の金具をマイナスドライバーとペンチを使用して金具を垂直に加工します。ネジ穴にM4ビスをねじ込み裏板をプーリー抜き具のように4本のネジを交互にねじ込み底板を取り外します。ネジの先端は内部にあるトランス固定金具に当たっているため安全です。
内部を見ると絶縁祇、ブッシングを取り除きます。トランス内部は全体にピッチづめされておりこれからの分解作業が大変です。

底板の抜き取り




ピッチで封止された出力トランス
ピッチ除去


接続端子台を取り付けたまま加熱すると焼損、変形を心配しましたが 加熱中 端子台の変形もなく トランスケースからトランス本体全体を抜き取る作業が完了しました。トランス周辺、ケース内にはまだ多くのピッチが残留しており ピッチが柔らかいうちに除去します。冷えるとピッチが硬化しますので適宜加熱してください。

ドライヤーでピッチを加熱

トランクケースよりトランス本体を抜き出した状態

トランス全体が非常に高温になります。作業を行うにあたりやけどなどしないように安全具を用意してください。(手袋。ウエス等を準備)

熱くて掴みどころがなく図のようにネジとか寸切りボルトを取り付けてピッチ詰めされたトランス本体を抜き取ります。



ドライヤーでは全体を加熱するには時間がかかるため 加熱装置は オーブン電子レンジのオーブン機能のみにで出力トランス全体を加熱するのが簡単です。ドライヤーだけで分解したときには時間と暑さの戦いでした。オーブン温度は約200~250℃ 2~30分程度加熱します。
食品を扱うオーブンレンジを使用しますので 必ず奥様の承諾を得から作業をしてください。

トランスケースより取り外し


ケース内に残留したピッチも除去する
KMQ-60 に搭載していた出力トランス
図の写真はドライヤー(1KW)で抜き出した時の画像です。オーブンで加熱したほうが労力としては楽ちんです。煙がオーブン内に立ち込めるまで加熱は厳禁です。奥様にお叱りを受けます。ピッチの柔らかくなる温度は200℃前後が最適と思われますので加熱中は目視と嗅覚を使って監視してください。使用後オーブン内はピッチのにおいは少なかったです。

上図は出力トランスの固定金具を分解、端子台と出力トランスのリード線のハンダ付けを取り外したところです。



トランスコアの分解


コア取り付け金具の分解
トランスコアの分解工程
コア分解中 SQ-38FD用出力トランス
図は出力トランス本体を分解したところです。コア(鉄心)はパラフィンが侵入しておりドライヤーで適宜加熱しながらE,I型の鉄板を分解します。最初はぎっしり鉄板が詰まっていて分解するのにちょっと苦労しますが 鉄板と同じ厚さのスペーサーを挿入し一枚ずつ分解すると写真の部品レベルまでとなります。E,Iコアの材質はオリエントコアと思いますが確信はありません。

分解完了した出力トランス
KMQ-60 搭載トランスの一次巻線

KMQ-60 搭載トランスの二次巻線
2次巻線太さ測定

1次巻線太さ測定

P 一次巻線太さは 約 0.19mm
S 二次巻線太さは 約0.44mm

('デジタルノギスは取引証明以外用です)

巻線状況調査


巻きほどき用治具に搭載した巻線部分

コイル部(線輪)を分解するのにあたり 巻きほどき作業をスムーズに巻き解くために台所から蒲鉾の板で回転できる型枠を工作しました。各コイル層の間には 絶縁紙が巻かれており パラフィンが含浸されているので 適宜ドライヤーで加熱しながら分解を始めます。絶縁紙をはがす工程が一番困難でした。数台分解しましたが途中で分解調査・巻線数のカウントをあきらめたトランスもあります。複雑な巻線構造です。


巻き線構造は分割、サンドイッチ巻であり 教科書通りの構造になっています。二次巻き線(セカンダリー)が4パラレル接続、4分割構造です。又一次巻線(プライマリー)は直列接続(シリーズ)となっており巻線が分断されています。一次巻線と二次巻線が分割され サンドイッチ状に交互に巻かれていました。

巻き線の分解調査

二次側の巻線は4分割されて各層2段に巻かれています。二次巻線タップ間の取り出し位置は順番には巻かれていません。

3段目 S   0~4Ω間巻線

0Ωから4Ω間    75回巻
4Ωから6Ω間    17回巻
6Ωから8Ω間    14回巻
8Ωから10Ω間   13回巻
10Ωから16Ω間  31回巻
0Ωから16Ω間の巻線数は150回巻

巻き線の中間は75回であり端子としては4Ωの端子となります。理論通りの巻数配分となっています。


4段目 S   8~10Ω間巻線

上記の二次側巻き線構造により OY15-5は一次側インピーダンスが 5KΩP-P 仕様となっています。巻き線比は16Ω端子に於いて 17.7 : 1 となりますので 一次巻線数は 150×17.7=2655t であると推察できます。電源供給端子(B1,B2)からの真空管プレート接続端子(P1,P2)巻線数は1328回巻と考察できます。
8Ω端子ですと 二次巻線数は 106回巻となりますので巻数比を掛け算すると
106×25=2650t になります。近似値が計算できました。

巻線状況詳細

巻き線構造は巻き線の外側より中心部にしたがって25段の巻き線構造となっていました。掲載順序としては分解順の巻き終わりからの表示としています。又巻線途中で分断された一次巻線を手作業で半田付け、SGタップ分岐半田付けされていました。

01段目  P一次巻線  125t   巻き終わり   半田付け          25へジャンプ
02段目  P一次巻線  125t   腐食箇所あり   半田付け B2タップ端子へ
03段目  S二次巻線  75t  0Ωから4Ω
04段目  S二次巻線  31t  10Ωから16Ω
04段目  S二次巻線  13t  10Ωから8Ω  
04段目  S二次巻線  14t  8から6Ω 
04段目  S二次巻線  17t  6Ωから4Ω
05段目  P一次巻線  154t           半田付けB1タップ端子へ
06段目  P一次巻線  154t
07段目  P一次巻線  157t           半田付け          17へジャンプ
08段目  S二次巻線  75t  0Ωから4Ω
09段目  S二次巻線  31t  10Ωから16Ω
09段目  S二次巻線  13t  10Ωから8Ω  
09段目  S二次巻線  14t  8から6Ω 
09段目  S二次巻線  17t  6Ωから4Ω
10段目  P一次巻線  102t 腐食箇所あり 半田付けP2タップ端子へ
11段目  P一次巻線  151t
12段目  P一次巻線  156t 腐食箇所あり
13段目  P一次巻線  155t
14段目  P一次巻線  123t        分岐半田付SG2タップ端子へ  
14段目  P一次巻線  36t          半田付け           24へジャンプ
15段目  S二次巻線  75t  0Ωから4Ω
16段目  S二次巻線  31t  10Ωから16Ω
16段目  S二次巻線  13t  10Ωから8Ω  
16段目  S二次巻線  14t  8から6Ω 
16段目  S二次巻線  17t  6Ωから4Ω
17段目  P一次巻線  83t                                 7へジャンプ
17段目  P一次巻線  68t        分岐半田付SG1タップ端子へ 
18段目  P一次巻線  159t 腐食箇所あり
19段目  P一次巻線  147t 
20段目  P一次巻線  160t 
21段目  P一次巻線  156t          半田付けP1タップ端子へ           
22段目  S二次巻線  75t  0Ωから4Ω
23段目  S二次巻線  31t  10Ωから16Ω
23段目  S二次巻線  13t  10Ωから8Ω  
23段目  S二次巻線  14t  8から6Ω 
23段目  S二次巻線  17t  6Ωから4Ω
24段目  P一次巻線  130t                         14へジャンプ
25段目  P一次巻線  130t   巻き始め                 1へジャンプ

上記のような巻き線階層になっていました。巻き数については100円ショッブで購入した手動カウンターを使用しましたが 現実にはカウントミスがあると思います。ご勘弁を。参考までの数値としてください。一次巻線のトータールは 2471回巻となりました。理論値に比較して少ない巻き線回数となっていました。 2471t/2650t 92.7% 
上記の調査を元にトランスのインピーダンスを計算しました。 
一次巻線(n1)と二次巻線(n2)の巻線比は n1/n2=N より 2471(t)/150(t)=16.47 (N:巻線比)
トランスのインピーダンス計算式により 二次側インピーダンス(z2)を16Ωとすると一次側インピーダンス(z1)を考察すると z1=N・N・z2 に代入します。数式を計算すると一次巻線インピーダンス(z1)は  約4.3KΩ(p1-p2間) となりました。(巻線回数計測において多少誤差があると思います)

分解調査結果よりのトランス構造(数字は段の番号と巻線数)

P1-21-20-19-18-17-SG1-17-7-6-5-B1       P1-690t-SG1-548t-B1 合計 1238t

P2-10-11-12-13-14-SG2-14-24-25-1-2-B2      P2-687t-SG2-546t-B2  合計 1233t

P1-P2 の巻線数は 2471t     0Ω-16Ω の巻線数は 150t

P 一次巻線巻き終わり 25へジャンプ線と半田付け接続

巻き終わりから順番にコア内側へと絶縁紙をドライヤーで加熱しながら分解巻線調査をします。

3段目二次巻線の巻きほどき後






















3段目巻線 二次巻線0~4Ω間であり3段目全体に0.44φの二次巻線が巻かれています。4段ある二次巻線の一番外周部の巻線です。

4段目二次巻線の分解

二次巻線 右側から巻き始め
12Ω~8Ω 13t
8Ω~6Ω  14t
6Ω~4Ω  17t
16Ω~12Ω 31t( 写真では巻き線はありません分解完了)

5段目 B1タップ出し

5段目B1端子への巻線と取り出しリード線への半田付け箇所です。

7段目の接続箇所

7段目で14段目からの一次巻線を半田付け接続箇所です。

14段目 SG-2 タップ取り出し

上記の巻き線の構造となっていました。SG-2タップは電源タップのB1,B2位置から 44%の位置に取り出されています。ウルトラリニア(UL)接続の場合は電源側にタップ位置が近いため 5極管特性に近づきます。

一次巻線と二次巻線間の絶縁紙

巻き線層位置により 1ターンあたりの巻かれる電線長さが違ってきます。 P1側とP2側の一次巻線電線直流抵抗値が同じような数値となるように P2側の巻き線は巻き始めと巻き終わり部に分散させて巻かれており 一次巻線の長さを調整して直流抵抗値の同一化としていました。又一次巻線層と二次巻線層間の絶縁紙厚みは厚い絶縁紙を使用されています。一次巻線層間は薄い絶縁紙を使用していました。

分解前には 一次巻き線は 並列(バイファイラー)巻と判断しましたが 現物はあてがハズレ直列巻になっていました。一次巻き線を並列に巻くことにより直流抵抗値が等しくなるが真空管プレートからの高電圧の交流信号により絶縁被膜破壊(レーアーショート)の可能性があるためと思います。一次巻き線は直列に細い絶縁電線(通称エナメル線) 0.19mm を巻いてありました。

巻き初めまでに各段注意深く巻きほどきながら 巻線数をカウントしました。


見つけたり !! 故障原因 緑青(ろくしょう)による銅線の腐食 !!!


一次巻線0.19φ 腐食による断線 デジカメのマクロ撮影とトリミングの限界 


今回分解調査しましたトランスは SQ38FD搭載分では3箇所の腐食箇所を確認しました。又KMQ-60に搭載されていたトランスの一次巻線側は断線はしておらず抵抗値高化状態でしたが腐食箇所は6箇所確認しています。合計の4台の検体トランスを分解調査しましたが同じような腐食が確認できています。同じ故障であり品質管理部門は何をしていたのでしょうか ? クレーム問題ではないのでしょうか ? 他社のトランスではここまで同じ故障の多発には遭遇していません。

写真中央 一次巻線の錆びた跡が判明

絶縁紙に腐食による青緑色の錆びた跡が観察できます。

LUX OY15-5 独特の一次巻き線直流抵抗値が大きくなり 最終的には一次巻き線断線の症状になると判断しています。出力トランスでの焼損は経験していません。

故障当時の常用システムでの故障経験です。
当時組立後約8年前後で終段出力管の動作電流のバランスが崩れDCバイアス調整で一時的には良くなりましたが 歪が増加し不安定な動作となりました。当時は現在のように数多くの測定機器を所有しておらず 真空管不良は考えましたがまさかOPT不良とは想像しませんでした。測定は一次巻線P-1,B-1間に発生する電圧と P-2 B-2間に発生した電圧で調整をしていました。実際出力真空管50CA10カソード電流は測定していません。特に当時ではLUXは10年保証の優秀なトランスでしたので・・・・。
今回の分解調査により 錆びによる抵抗値の増加が進んだと判定できました。と同じ緑青という腫瘍の発生でした。当時は真空管不良と思い込 4本をLUXMAN 50CA10 表示の純正真空管と交換しましたが改善されず 悩んだ結果 まさかの出力トランスの一次巻線抵抗値の高化が原因と判明しました。純正出力トランスの交換で修復は完了できました。当時は故障原因の追求はできていません。同じ時期に LUXKIT A3400 の電源トランスの発煙事故があり 不良品を当時のLUX本社所在地関東に宅配便で送付しましたが 何の音沙汰もありませんでした。出力トランスは今回の調査で詳細な原因が判明しました。

トラブルの製品は OY15-5 を搭載した 当時の常用システム LUXKIT KMQ60です。SQ38FDと同じOY15-5を使用しており その後も他チャンネルのトランスも同様の故障したため LUX OY15-5から タムラF-683に交換して長期間使用しています。タムラに交換後の不具合は発生していません。ただトランスの高さが高くボンネットを取り付けるとトランスとボンネットが接触するため ゴムマットで5mm嵩上げして使用していました。今回もどきの出力トランスに交換しましたので 初期の容姿に戻りました。オーバーホール内容として コンデンサー、半固定VR等を交換し再調整、測定機による実働試験を実施しました。出力トランスは小振りとなりましたが初期性能はほぼ維持できています。

当時のトラブルの後 LUX製品を進めた小生周辺悪友などのオーディオ仲間も同じ出力トランス搭載の製品が 調子がおかしいと言われ 確認すると同様の故障が多発。真空管よりも先にOPTの故障を疑いました。正解でした。悪友の製品では故障当時購入後10年以上経過しており 新規にはOY15-5のトランスは販売してくれず 物々交換の不良品を送付して新品のトランスを購入した記憶があります。片チャンネル故障の時でも両チャンネル共 出力トランスを交換しました。純正トランスから他社製品のトランスに載せ替えも実施しています。小生主観として 1980年前後から 出力トランス OY15-5 は信頼性が全くありません
修復した悪友のLUX真空管アンプは現在でも実働するかは 故人を含め全数は把握できていません。

真空管コレクター、真空管アンプ修理業者のように 保守管は数多く保有していませんが元箱に収納した新品未使用管・機器抜き取り管を含め200本前後道楽部屋で保管しています。50CA10については中古管を含め10本未満となりました。ペアチューブ選別で苦慮しています。LUX純正未使用管ですらばらつきがあります。代替部品などを調達し 手を加えながらもうしばらくは真空管アンプての 道楽が継続できそうです。

現在 KMQ-60 は OY15-5もどき を搭載し山小屋で実働中です !!


分解調査による故障原因考察


今回巻きほどいた一次・二次巻線



 故障原因を考察すると 一次巻き線の絶縁被覆にピンホール等があったと思います。経年変化によりピンホール部の絶縁被膜が途切れた箇所から徐々に金属酸化・硫化現象が発生していたと思います。導体である銅が空気中の酸素、及び充填物であるピッチからの硫化物質により 腐食等が進行し銅線の断面積が減少し直流抵抗が増加する事になります。トランスケース内に石油系充填物のピッチが使用されており 通常では酸素、硫化ガス等からは守られているが 微量の酸化・硫化ガスと導体絶縁被膜ピンホールにより長時間使用すると故障に至る、構造上の問題メーカーの品質管理問題があったと考察します。錆びの物質については化学物質検査をしていませんので緑青なのか硫酸銅であるかは検証していません。どちらもよく似た同じ色合いです。このLUX OY15-5出力トランスは巻線保護対策として古くから使用されていますピッチづめ構造です。ワニス含浸処理とは異なります。このピッチづめ構造により一次巻線が一般のトランスより細いための多発故障かもしれません。であれば一次巻線故障の原因は酸化(酸化銅 CuO2)腐食ではなく硫酸化(硫酸銅 CuSo4)腐食による故障が原因と思います。

OY14-5を搭載した機器においては出力トランス不良には遭遇していません。OY15-5KHPは後期製造品でありメーカー品質管理の点から考察しても改善されていると思います。


OY15-5もどき(互換品) の作成

 今回 OY15-5 トランスケース内に他社のトランスを内蔵しOY15-5もどきのトランスを作成しました。

OY15-5載せ替え可能な代替品の候補として

タムラ製作所           F-683 (105h)
旧タンゴ 平田電機製作所      CRD-5 (80h)
新タンゴ ISO          FE-25-5 (80h) FX-40-5 (104h)
ノグチトランス          PMF28P-5K
橋本電気(山水)                  使用したことがなく不明 HW-25-5 (110h),HW-40-5 (110h)

などが候補としてあげられます。特性、大きさ、価格に差異がありますが 懐と変更に伴うシャーシー加工の労力が異なってきます。特にF-683を取り付けるには端子板の直径が大きく大変な金属加工が伴います。トランス高さに注意してください。OY15-5はトランス高さが 96hです。新タンゴ ISO社も廃業され良質な真空管用トランスメーカーは数が少なくなっています。

調所電器製互換トランスの搭載

OY15-5 トランス巻き替え(トランスの修理)として 代用トランスの入れ替えでノグチトランス PMF28P-5K を採用しました。又違う内蔵トランスとして選択したのは 調所電器製互換トランスも選択しました。コア材は同一でありコアボリュームも同等で作成されています。型番は納品書には記載されていません。OY-15-5互換用OPTトランス(単体)と明記されていました。

調所電器製 OY15-5 互換トランス

今回山形県にあるトランスメーカー ㈱調所電器さんに相談しましたら OY15-5互換品の出力トランスを作成してくれることが判明しました。400VAの電源トランスは手巻きで作成した経験がありますが 25段の分割巻きは手巻きでは作成することが困難です。やはり巻線機がないと巻き替え作業はできません。
LUXと同じ巻線構造で作成も可能とのことでしたが製作費は高額となります。互換品の出力トランスは随時製造されているようです。在庫品があれば納品に時間はかからないと思いますが在庫がない場合は作成するのに時間をいただきたいとの返事でした。通常故障品のLUX OY15-5トランスを送付しますと小生が今回分解したように故障品のトランスを抜き取った後 調所電器さんで作成したトランスを搭載して修復品を送付するようです。

LUXのトランス取り付け金具に搭載及び端子間配線

小生も最初はLUXのトランスコアを送付して巻き替えてもらうつもりでしたが コア材は同じものが現在でも入手が可能であり送付いただかなくても結構ですとの返事でした。コア材はやはりハイライトコアではなくオリエントコアを使っているようです。分解したLUXのトランスコアはパラフィンが付着しておりパラフィンの除去作業に追加作業のコア洗浄工程が人件費として加算となり作成に時間が必要になるようです。加工費用よりは同じ特性の新規コア材を使ったほうが安価になる場合もあると思います。
あくまでもLUX OY15-5と同一構造品を使用したい方は高額となりますがご相談いただければ作成は可能との返事でした。
オーダーメイドのトランス作成は人件費がかさみ高額となるようです。互換性のある汎用品で妥協もしなければなりません。
今回小生が発注しました出力トランスは多少巻線階層が変わりますがメーカーの実働試験で大きな違いもなく分割巻きで二次側巻線は4Ω、8Ω16Ωのタップ構造となります。一次巻線は多少太くなり一次巻線のDCR値は低くなりますので純正トランスでの一次巻線に発生する直流電圧でのアイドリング電流調整ができません。各出力管カソードにアイドリング電流テストポイント用の精密抵抗器新設が必要となります。6Ω、12Ωタップは省略されており SQ38FD用の出力トランスと同等となります。うれしいことにSGタップも取り出されていました。SQ38FDに搭載されていたトランスではSGタップはありません。
今回作成していただいた出力トランスはワニス含浸処理トランスとなりますのでトランスケース内にはピッチ充填作業は発生しません。
小生のようにトランスを分解できる方であればトランス単体の注文となりますので購入価格は安価になりますが手間(人件費・労務費)を考えれば 通常トランスを送付して入れ替える方がほとんどのようです。
内蔵トランスのみを発注の場合 入金確認後在庫があれば数日で手元に到着します。

参考数値

OY-15-5互換用OPT詳細(寸法・巻線直流抵抗値測定)
トランスの詳細な諸特性は納品書には記載・添付されていませんでしたので小生所有のデジタルマルチメーター ADVANTEST R6551  メーカー非校正測定器での測定値です。自己校正では0.5級以内の精度はあると思います。

トランスコアの寸法  概略値約 78×45×65  重量約  1.5Kg
                  OPT-A       OPT-B
P1-B1         91.5           92.2     単位はΩ
P2-B2         91.6           92.3
P1-SG        42.3           42.9
SG-B1        49.1           49.3
P2-SG        51.5           51.5
SG-B2        40.1           40.7     小数点2桁め以下はカットしました
0-16     0.56     0.56     小数点3桁め以下はカットしました   

上記数値は室温16℃での測定結果です。測定器は1時間プリヒート後に測定。ファンクションは 4WΩで測定。2WΩでも測定が可能ですが特に1Ω以下の測定ですと測定リードなどの残留抵抗があるため測定誤差が大きくなります。今回は面倒な操作ですが4WΩモードで測定しました。簡易校正は0.05%誤差の精密抵抗を使って校正しています。この数値の中で各コイルでのSG-B とP-SG 間の抵抗値が違っていますが巻線構造により発生することです。正常です。SGタップ位置については互換品であればB端子より44%位置と判断します。 各P-B間の直流抵抗値がバランスよく巻かれており優秀なトランスです。
外観から構造を観察すると二次巻線は3分割巻き?であり P(0.24φ),S(0.70φ)が交互に巻かれたサンドイッチ巻き構造と思われます。一次巻線及び二次巻線はオリジナルのOY15-5と比較すると太い絶縁電線を使用しています。二次巻線の分割数についてはトランスを詳しく調査していませんので2分割か3分割かは不明です。二次巻線取り出し接続端子での観察では4分割ではないと思います。外観観察による調査です。詳しく巻線回数など分解調査はしていませんのでご了承ください。あくまでも参考程度です。

出力トランス一次巻線と二次巻線線材の断面積比率調査( )内は線材の断面積

        OY15-5        調所互換トランス
一次巻線   0.19φ(0.5969)   0.24φ(0.7539)
二次巻線   0.44φ(1.3823)   0.70φ(2.1991)
断面積比率   1:2.315        1:2.9169
体積比率     1:2.081    1:2分割 3.05 3分割 2.03 4分割 1.53 
調所トランスの二次巻線分割数を2・3・4・分割での体積比率を計算すると上記比率となります。(体積比率は理論値巻線比より算出)

断面積比率と体積比率により3分割巻きと判断しました。あくまでも個人的見解・憶測です

骨董品 DELICA 1100 インピーダンスブリッジでトランス巻線比・インピーダンスの測定
                                (測定器の基準測定周波数 1000Hz)
巻線比の測定においては 0-16Ω間の巻き数を1とすると P1-P2 間の巻線比 1:16.2 と計測できました。理論値の巻線比は 1:17.7 です。LUX OY15-5 では分解調査結果から巻線比は 1:16.3 でした。調所互換トランスのインピーダンスを測定しますと 二次巻線 0-16Ω端子間に16Ωの抵抗を接続して1000Hz基準信号での測定結果は 一次巻線 P1-P2 間のインピーダンスは 5KΩが測定できました。LUX OY15-5 と同等のトランスであることを確認しました。
使用しました測定器、インピーダンスブリッジは製造後45年以上経過している三田無線研究所製です。(1967年製)

DELICA 1100 測定器納品当時では試験成績書によると 測定精度は1%以内の精度ですが現在は 自己校正用の精密抵抗(0.1%,0.05%)、精密コンデンサー(1.0%)を使用して校正作業を測定前には実施します。悪くとも2%以内の誤差測定結果と判断しています。ただ自己校正用としてインダクター(5.0%)しか所有していないため インダクタンスについては5%以内となっていると判断します。作業前校正では測定器はほとんど狂いは発生していません。測定器の使用頻度が少なく キャリブレーションは測定器の動作確認作業となっています。インピーダンスブリッジについては http://musenan03.blogspot.com  を参照ください。

純正のLUX OY15-5 のトランスに比較して一次巻線抵抗値は約半分強の値となっています。一次巻線・二次巻線とも太い電線を使用しているため直流抵抗値(DCR)は低い値で正常です。

測定結果から巻線のDCR測定において大きなばらつきは測定できません。優秀な巻線構造のトランスであると判断しました。後日各周波数の測定を実施する予定ですが測定機器が骨董品のため測定にかかる作業には時間が必要と思います。実働試験で代用するかもしれません。トランス単体の調査するには細かく周波数を変化させた一定電圧を一次巻線に印加し 出力電圧を測定し対数グラフ上にプロットします。オーディオジェネレーターとACミリボルトメーターの出番となります。
LUX OY15-5トランス銘板には各ターミナルの端子番号と仕様が記載されており 銘板に記載されている端子番号順に配線すれば問題は発生しないと思います。

調所電器さんの話では真空管用出力トランスで特性に一番大きな影響を与える部品はトランスのコアであるといわれています。故障品のビンテージトランス ピアレス・ソンダーソン・WE・UTC など海外製品のトランスも巻き替えされています。商用電源のトランスであれば50Hz,60Hz の周波数だけで設計すればよいのだがオーディオトランスは広帯域の周波数で伝送するため 大きな信号から小さな信号まで周波数特性、位相、損失、リニアリティーなどを考慮しての巻線構造・コアの選択となるようです。電気エネルギーの伝送において電気信号を磁力線に変化後又電気信号に戻す仕組みがトランスフォーマーです。如何に損失が少なく磁力線を使ってエネルギー変換をすることから少ない巻線回数で大きなインダクタンス値が得られ リニアリティーもよく 強い磁力線に変換できるかがポイントととなるようです。

調所電器製互換トランスを搭載して修復した SQ38FD-c
今回の修復においてトランスをケースに収容して実機に搭載しましたが問題が発覚しました。NFBがPFBとなってしまい発振症状です。巻線位相を点検しなかったからです。今回導入したトランスには各端子名称が明記されており OY15-5 銘板の端子番号に配線しました。その結果負帰還とはならず発振状態です。今更トランスの分解には手間がかかるためトランスの端子板で各プレートの配線を入れ替え正常となりました。
参考記載  LUX OY15-5銘板表示
端子番号  ① P-1,  ② SG-1,  ③ B-2,  ④ B-1,  ⑤ SG-2,  ⑥ P-2,
                 ⑦ 16Ω, ⑧ 遊休 ,  ⑨  8Ω,  ⑩ 遊休,  ⑪ 4Ω ,  ⑫ 0Ω,        
SQ38FDに搭載されているトランスでは歯抜け状態です。各SG,B2,⑧,⑩端子が歯抜けになってます。B端子も分離されていません。KMQ-60では ⑧端子は 12Ω,⑩端子は 6Ω端子となっています。
今回修復しましたトランスはSQ38FD用を使用してた関係で端子の数が不足していましたので銅板を加工して取り付けしています。トランスケースは黒色艶消しのラッカースプレーにてお化粧直しをしました。

詳細については LIST D-1 フィールドコイルスピーカーで有名な調所電器さんに問い合わせたいただいたらよいと思います。ホームページからでも確認できます。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~chosho/transrepair.html

ノグチトランス PMF28P-5Kトランスの搭載

トランス単体からは巻線構造は把握できませんでした。特性グラフのみの添付であり詳細については不明です。一次側巻線DCRもオリジナルと比較すると低い値を示しており 巻線の太さも不明です。下記写真のように端子台の配線をすれば OY15-5トランスの互換トランスとして使用することができます。

ノグチトランス PMF28P-5K

ノグチトランス販売より購入した PMF28P-5K 出力トランス。


合わせトランスカバーを分解してトランス本体を取り出します。


LUX OY15-5 とPMF28P-5Kの大きさ比較

PMF28P-5KのトランスコアとLUX OY15-5 との比較をするとPMF28P-5Kは小ぶりのトランスであると判断できます。コアの大きさは小ぶりですが元のトランス取り付け金具に今回は順調に加工搭載できました。


PMF28P-5Kの二次側配線をOY15-5端子台に配線

トランス二次側巻線の配線をLUX OY15-5端子台に配線します黒色が0Ω・白色が4Ω・紫色が8Ω・緑色が16Ωの各端子に接続します。


PMF28P-5Kの一次側配線をOY15-5端子台に配線

一次巻線のターミナルへの配線です。OY15-5
 38FD用のトランスではSGタップが存在しません。しかしPMF28P-5KのトランスではSGタップとして取り出されていますので KMQ-60用
 で使用されていたトランスと同等に配線をします。端子名称としてはB1・B2タップがありますが PMF25P-5KではB端子が共通として取り出されていますのでB1,B2端子は片側は遊休(NC)とします。一次巻線は直列構造となっておりB電源端子の分離はできません。

一次巻き線のターミナルへの接続

PMF28P-5K を搭載した LUXKIT KMQ 60

上記の配線接続により OY-15-5 と入れ替え後NFB接続となり機器の発振は発生しませんでした。元のトランスと位相が合致していると思います。

トランスの大きさを考慮しノグチトランス PMF28P-5K を採用しました。合わせタイプのトランスですが 今回はもどき とするためケース入りにこだわりませんでした。
またOY15-5トランスケースに搭載することによりシャーシー加工が発生しませんが 出力トランス作成において大きな労力が発生します。ノグチトランス PMF28P-5Kを使用して加工しました。図の比較においてコアボリュームに大きな差異がありますが システムに於いて常時最大出力で運転動作することはありません。最大定格を犠牲にして作成しました。他にOY15-5の多種候補としてはありますが搭載するときに大きさを考慮しないと現実問題搭載不可能な出力トランスは候補からは排除しました。特にSQ38FD改修作業においてシャーシーがフラットではなく取り付けスペース、金属加工、外観を考慮して選別しなければなりません。

元のトランスケースにもどき出力トランスを組み立て

 トランスケース内に残留していたピッチはドライヤーで加熱しながら根気よく除去します。

 あとは元に組み立てれば OY15-5もどきの完成となります。外見上は判断できません。

 もとの端子に新しい出力トランスを配線するときには 巻き線の位相を 元のトランスに合わさないと修復完了後NFBが逆相となり発振のおそれがありますので 必ず巻き線の位相合わせ作業が必要となります。

調所電器製のトランスで組み替えを依頼した場合 メーカーで位相を合わせ後 完成品としてて出荷されますので このような位相合わせの作業は発生しません。ただトランス本体だけを購入した場合トランスケースに自己でターミナルに配線・組み立てとなりますので位相合わせ作業が発生します。

もどきトランスがケース内に収容された状態

ほぼもどきトランスの完成です。あとは底板を圧入すれば完成となります。


OY15-5もどき 出力トランスの完成

調所電器製互換トランスを搭載した OY15-5 もどき出力トランスの完成

 OY15-5の出力トランスには二種類存在します。又ターミナルの数も違っております。分解調査したトランスでは SQ38FDに搭載されていたトランスはSGタップがなく接続端子数が少なく歯抜け状態であり B端子は分離されておりません。KMQ-60、MQ-60に搭載されているトランスは端子数が多く トランスカタログに記載されている仕様でした。
SQ38FシリーズOY15-5の出力トランスは大量生産されコストダウンされたタイプと思います。故障原因から推察すると 電線材料等の品質、材料受入検品、作業工程、巻線機の保守などに不手際があったと思われます。製造における品質管理と思いますが・・・・・

もどき出力トランス搭載です 真贋が判別できますか?

他社の出力トランスも多数使用してアンプを作成してきましたがトランス不良は数多く遭遇しておりません。 OY15-5は同様の故障が多数発生しており リコール対象物と思いませんか・・・・・
1970年代後半には製造メーカーとして品質保証部では原因を調査・追求していたはずです。通常製造メーカー責任としてユーザに対して改善策を立案すると思いますが・・・・・

故障当時10年保障とうたわれたラックスのトランスですが 大阪には本社がなくなっており関東にある本社に不良トランスを宅配便で送付しましたが いくらたっても音沙汰がなく泣き寝入りとなりました。

出力トランスの位相合わせ

出力トランスを交換する場合には NFB回路が形成されている回路では 負帰還になるように真空管回路に戻さなければなりません。もしも位相が逆で正帰還の場合は発振してしまいます。トランスを交換の場合必ず 位相をチェックしなければなりません。自作アンプなどでは真空管のプレートに接続される配線を入れ替えて負帰還となるように配線変更します。今回のような修復においては 純正出力トランスではなく他社製品に入れ替える場合は注意が必要です。メーカーによっては説明書に巻き線位相をドットマークで記入されている場合もあります。注意して確認してください。

巻き線位相が不明の場合 位相合わせの治具としては AC24V パワートランス、交流電圧計があれば簡単に位相確認ができます。安全性を考慮しPTは AC24VからAC48V 程度を準備します。
例として出力トランスの一次側巻き線に AC24V を接続します。(P1,P2 間にAC24Vを接続し もしもB1,B2間が開放状態であれば B1,B2端子間を短絡します)
二次側には巻線比に比例した交流電圧が発生します。5KΩP-Pのトランスの場合巻線比は二次側インピーダンスが16Ωですと 一次側に AC24V を加えると 巻線比が 17.7:1 になりますので二次側の電圧は 約1.4V 発生します。トランスは一次巻線と二次巻線を直列に接続し 直列に接続されたトランスの両端の電圧を測定します。位相が同相であれば入力されたAC24V+二次側の交流電圧が加算された電圧が測定されます。又逆位相の場合は 入力されたAC24Vよりも二次側に発生した電圧分が低く測定されます。もしもプッシュプルトランスで一次側巻き線が片側が断線している場合でも 片側巻き線で位相合わせは可能です。加算となった接続をマーキングし 位相を間違えないようにして組み立てます。


改修作業については自己責任でお願いします!!


無銭庵 仙人の 独り言

今回OY15-5 を分解調査しました。
小さい頃 街の電気屋さんに出力トランスの替えコイルが販売されていました。その当時のラジオは5球スーパーラジオが主流で 音声電力管は 6Z-P1 か UZ-42 でした。
小生が幼少の頃は自宅に6球スーパー電蓄で UZ-42 か゜使われていました。スピーカーは エレクトロ、ダイナミック、スピーカーといい フィールドコイルのついた8インチダイナミックスピーカーでした。その後フィールドコイルから永久磁石のパーマネント、ダイナミック、スピーカーに変化。
当時の世間にはキンキン音の8インチマグネチックスピーカーも存在し 磁石入手によく分解しました。(直流モーター用馬蹄形永久磁石)
この時代も同じように出力トランスの 一次巻き線事故が多かったと思われ替えコイルの需要があったと思われます。その不良コイルのエナメル線入手のため トランスを分解しモーターを工作した記憶があります。(小生小学校の頃)

LUXのトランスは諸特性を他社のトランスと比較して非常に優秀な出力トランスです。
今回分解で感じたことは 大量生産のできない町工場で作られた手作業によるトランスと思います。
東京の大田区、大阪の東大阪にある町工場で作られたかどうか?不明です。
特性が良質な分 一次巻き線のインダクタンス値を得るには巻き数を多くしなければならず 使用する銅線も細くなります。又教科書どおりに分割 、サンドイッチ巻きされおり 分断された一次巻き線と二次巻き線を 手作業で半田付け接続されておりました。中には巻き線途中でハンダ付けされており 線材が外部に引き出されず 巻き線工程途中で接続された箇所もありました。
SQ38FDに使われていたトランスの場合 8Ω端子の二次巻き線のタップ出しは線材途中からリッツ線でハンダ付けされ外部に取り出してありました。KMQ-60用は各端子ごと外部にに引き出されています。

SQ38FD 用OPT二次巻線8Ω端子取り出し

今回のOY15-5での多発故障はたぶんトランス内部にピッチ充填による故障ではないかと推察します。ピッチは石油精製時に産出する物質です。原油には硫黄分が含まれておりこれらの残留物質により銅線が腐食したと考えられます。ピッチ充填はコイルが空気中の水分・酸素と触れないように保護する役目ですがピッチには硫黄が含まれておりこれが犯人と推察します。電源トランスではオープン型の場合ワニスといわれる樹脂でコーティングしますがトランス自体の故障は数多く見受けられません。特性を追究した結果このトランスは従来品よりより細い巻線を使っています。
又YEW製可動コイルの電流計などはOY15-5に使われている一次巻線より細い巻線ですが数多くの故障には同じく遭遇していません。LUXは戦前からある会社で老舗です。開業当時から採用されていた巻線保護用のピッチ充填と細い巻線の品質管理がアダのように思います。現在ではエポキシ樹脂などが充填剤として使用されています。

巻線機は機械ですが加工は手作業による家内制手工業と思います。
材料コストより人件費の塊と思います。新巻36000円高いとは思いませんか。現在は供給不能と思いますが。LUXにてトランスコアだけ送付しますので純正トランスを巻き替えてもらえないでしょうか。トランスケースは再使用しますのでトランス単体でも結構です。退職者の熟練元職人を再雇用し ローコストを希望します。
ボケ防止のための退職者の再雇用は人件費が正規社員に比べ非常に低いのが現状です。仕事の質は最高と思いますが。

メーカーとして本音は古い機種をいつまでも使用してもらいたくないのが現状と思います。PL法、製造物責任が問われる現代です。現代の機種に買い替えてもらいたいのが本音と思います。老舗のLUXです。当時の販売価格は当時の生活水準から考察すると非常に高額です。大卒サラリーマン3か月分の給料に匹敵する価格でした。現代の大卒初任給に換算すると約60万円程度と思います。それを考えると現代のLUXMAN真空管アンプは高額でしょうか ? 各自ご判断ください。小生は財力がないため購入できません。

老舗LUXMAN以外では真空管アンプでは他の供給先として国内ガレージメーカー、海外輸入品しか商品として供給されません。工作できない方であれば完成品の購入しか方法はありません。自作アンプでは自己でシャーシーの加工までできる方は数は少ないと思いますがおられます。後は組み立てキット、一部加工品を使っての自作アンプの作成となります。測定機器がない場合細かい調整ができません。テスター程度で調整できる回路しか作成できません。測定器がないと性能が出ない回路も存在します。複雑な回路よりは簡単な回路が好まれているようです。無帰還アンプも珍重されていますが好みの問題であり小生は作成しません。適度のNFBが有効と考えています。自己信念をもって道楽を楽しみましょう。

経年劣化、故障のない LUX OY15-5 を再生産を希望します。懐具合があるため高価格は御免。

現在ビンテージ中古品を販売していますオーディオショップ・オークションなどで取引されている SQ38FD などで完全動作品として取引されていますが 見た目には LUX OY15-5 出力トランスを搭載しています。信頼性においてオリジナル出力トランスでの使用には疑問があります。いつ故障するか不安で精神上よくありません。製造された時代の純正トランスを使い現在でも生き残っているトランスは数少ないと思います。小生のような OY15-5もどきを搭載しているかもしれません。見た目及びヒアリング比較をしたとしても真贋を区別できる人は数少ないと思います。アンプを目視せずに音だけで判別できる人はどれだけおられるでしょうか。小生は評論家・先生などと呼ばれる諸先輩のように判別できる良い耳は持っておりません。算数計算程度しか解けない凡人です。憶測です。


  SQ38FD 改修作業については別枠で報告します。 銭庵 仙人 プロフィールまで !!


小型送信管です 東芝 UY 807 と SYLVANIA 1625


東芝 UY-807  SYLVANIA 1625
1625 は12Vヒーター電圧で UY-807 の同等管です。いつアンプの出力管になるか未定。
真空管ソケットは足数7本です。5球スーパー用ST管 6W-C5 はスモールUt   1625 はラージUt で真空管ソケットの大きさが異なります。

1625 8本保守管として保管してありますが 今はタンスの肥やしとなっています。1625 は同等管としてソケット形状はUYとになりますが WE-350A があります。1625 と同様のトッププレート形状ですがソケット形状USオクタル WE-350B は頂部にプレートキャップはありません。同等管であり初期のトーキー拡声器にも採用された真空管になります。これらの真空管は分類すればビーム4極管です。基準管はメタル管 6L6 になります。これらのビーム4極管は設計も古く小型ビーム管として 6V6,6A-Q5 などもよく使われる真空管です。

UY-807 はアマチュア無線の憧れ A3,A1 送信機、終段電力増幅管、変調器の電力増幅管は GT管6V6p-p又は ST管UZ-42 p-pでした。二文字コールのOMさんが開局当時の電力増幅終段管は UZ-42 であり ダルマ型のST管を使った送信機・受信機で無線局免許を得たようです。自作送信機では UY-807 を使った製作例では 缶詰の空き缶がシールドケースとして使用されていました。RCA 6146又-Bはアマチュア無線家にとっては高嶺の花 高額な輸入送信管でした。同等管として業務用国産メーカーの  2B46 が無線通信用設備に数多く使われており 電話級・電信級アマチュア無線では国産 UY-807 ,S20011,6B-Q5p-p  仕様の組み立てキットが販売され その後多用されました。A3からA3Jに通信方式が変わり あるメーカーはカラーテレビ用水平偏向出力管 6J-S6C,6K-D6 が終段電力増幅管として使用され  送信電力を誇張ていました。真空管の絶頂期が過ぎ真空管製造が各社打ち切られ 真空管は特殊管を除き製造中止、設備は廃棄、外国に輸出転売。真空管は徐々に半導体に席を譲りました。日本では真空管製造中止が他国に比べ早く終了したと思います。大阪万国博覧会が開催され 高度成長時代1970年前後からの話であり 真空管アンプも一部のメーカーしか製造されておらず ほとんどのメーカーが半導体に移行しました。約40~50年前の出来事です。

6146W   2E26

当時高嶺の花の 6146系電力増幅真空管

Philips ECG JAN 6146W 
米軍規格品 (旧 SYLVANIA) 
現在保守用途管として 八重洲無線 FT-101ZD 用の保守管であり 6本保管中です。この機種は現在でも運用可能となっており 新スプリアス規格も取得しています。現在でも時々動態保存機として運用している無線機です。
現在 6146W はオーディオ用途としての使用計画はありません。
特にアマチュア無線家では RCA製 6146-B が有名でした。

NEC 2E26 通信用
自衛隊御用達品 米軍規格と同等 管壁には自衛隊の桜ロゴマーク
この真空管は 50MHzトランシーバー パナロク・スカイエリート用の終段管として採用されていました。


国産通信管 日立 2B46

国産産業務用通信管

日立 2B46 (6146)

管壁には旧日本電信電話公社(現NTT)ロゴマーク 業務無線設備用通信管
6146同等管

当時国産の 2B46 (6146)  は高額であり入手難でした。八重洲無線製にはカラーテレビ用途の水平偏向電力増幅出力管 6J-S6C が多用され トリオ製の無線機には松下電器産業製  S2001A などが終段電力増幅管として採用されていました。S2001Aの真空管は 6146相当管でしたがソケット部には 6146-Bのようなシールドが施されていません。当時組み立てキットであったトリオ製 TX-88D の終段管は松下製 S2001が付属されており TX-88Aでは終段管は UY-807でありキットには真空管は付属されておらず 田舎の電気店では入手困難でした。東京秋葉原か大阪日本橋の電気店では組み立てキット用途の真空管として販売されていたとの記憶です。

特殊管、マグネトロン、カラーテレビブラウン(CRT)管は真空管に分類されます。日本国内においても多少の真空管製造設備はつい最近まで存在したと思います。その後TVはPDP・液晶パネルへと変革し日本では現在どのような真空管が製造されているか小生は把握していません。業務用無線通信、放送設備は大電力の真空管でしたが 現在は半導体の電力合成技術により電力増幅管は半導体に変革しました。海外では真空管は未だに製造されており 輸入され、国内で入手可能です。

学生時代りんご木箱に収集したST管、なす管、戦前のラジオ管などをジャンクボックスとして保管していましたが 社会人となって田舎に帰郷して物色したときには ジャンク箱が処分されていました。 物を捨てられない症候群の小生にとっては宝であったはずが 他のものから見れば粗大ごみ扱いでした。現在保有している道楽で集めた収集物も将来どうなるか ? ・・・・・・・ コリンズ製R390Aを含め国産TX-88D,FT-101真空管式無線機など ・・・・  ご想像ください。


by musenan sennin




4 件のコメント:

  1. いや~「OY15-5もどき」の解析には驚きです。このような形でトランスを分解して調べる方はそうはいません。私もこのSQ38Dmk-2をもっていますが出力管のヒーターが断線し、使用していません、この管一本で万円ですから・・でも無銭庵のお話を聞いて諦めました。余談ですが私は今は亡き明治生まれの父の姿をみて育ちました。終戦まじかに生まれた私は空襲で焼き尽くされた状況の中で父は私を秋葉原へラジオの部品を買いに連れてってくれました。電気店を営んでいた関係で我が家はラジオの製造現場でした。戦後間もない頃でしたのでラジオはよく売れました。電源トランスは自前で作っていました。銅線は当時非常に高くエナメル線を巻く父の姿が記憶にあります。

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    1. ラジオ少年が復活した 無銭庵 仙人 です。終戦後の物の少ない貧困生活を経験し 現代では簡単に欲しいものがお金さえ出せば入手できる時代と変貌しました。道楽・趣味の世界としてくだらないブログを立ち上げています。

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  2. OY-15の分解、もどきの制作等興味深く読ませていただきました。今77才になりますが15歳位の時よりAMP政策がたのしみで
    5球スーパー、6石スーパー、6BM8Mアンプ、6080武末OTLアンプ等の制作しました。
    最後に残っていたLux A1020キットを引っ張り出して測定を始めました。
    このAmpは5年ほど前にで電源ON中に白煙が出て音がでなくなりしまっていたものです。
    先日中を見たところOY-14 5K 2個から大量に茶色いニカワのような充填剤が出ていました。
    配線、トランスの端子の間に詰まっている充填剤を取り除き発信器とオシロスコープ、および簡易スピーカーでampは正常に動作しているのがは九人出来ました。10Kの矩形波もそれなりに通ります。
    そこで教えていただきたいのですがOutput Trans内部に充填されているニカワのような液体はなくても大丈夫でしょうか?
    これは大出力時の熱の冷却の目的ですか?
    追加で充填するとしたら何をいれたらよいでしょうか?
    どうぞよろしくお願い致します。

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  3. こんにちは

    LUXKIT A1020 出力トランスOY-14-5 の件 トランスから漏れ出ているのは充填剤ピッチです。ただ気になるのは何故充填剤のピッチが漏れ出たのかですが 原因として出力トランス内部温度が上昇したと考えれます。過去にA1020は2台友人分を組み立てた経験はあります。トランスの温度上昇としては出力管 6R-A8 プッシュプル回路での長時間電流増加による発熱によりトランスの温度が上昇し内部に充填していたピッチが漏れ出たと考察できます。
    現在正常のようですが出力管のバイアス電流及びDCバランスがどうなっているかを確認する必要はあります。ただ手元に当時の組み立て調整マニュアルがないため測定方法については記載する自信はありません。AB1プッシュプルであれば6R-A8一本当たりカソード電流は30~40mA 程度と思います。たぶん出力トランスの各一次巻線に発生した直流電圧で調整したとの記憶であり電圧値までは覚えていません。
    絶縁不良・レア―ショートをしていないようであればトランスは生きていると思います。

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